一言で着物といっても、振袖をはじめ、さまざまな種類や違いがあります。
例えば、成人式に着用することの多い振袖や、夏祭りで楽しむ浴衣などです。
これらは、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。
今回は振袖と着物の違いや特徴、そして着用シーンをわかりやすく解説していくので、和装初心者の方はぜひチェックしてください。
振袖は着物の一種
簡潔に述べるのであれば、振袖は着物の一種です。
着物というカテゴリーの中の一つに振袖があり、その他に浴衣や訪問着といった種類があると考えるとイメージしやすいでしょう。
振袖以外にも、着物のカテゴリーには、下記のような種類が存在しています。
・留袖
・袴
・浴衣
それぞれの着物は、色柄や長さ、着用シーンなどが異なります。
着物によっては、着用する人にも違いがあるでしょう。
一般的な話ではありますが、会話の中で「着物」という単語が出てきたのであれば、訪問着を指すケースが多いようです。
とにかく「着物は全ての和装の総称」だと覚えておきましょう。
一般的な着物との違い!振袖はどんな着物なのか
着物の一種である振袖は、どのような特徴を持っているのでしょうか。
他の着物と振袖の違いについて、より詳しくお話します。
振袖の特徴①:振袖は未婚女性の礼装
振袖は第一礼装といって、最も格式が高い着物の一つです。
そのため、成人式のような式典や、結婚式のようなお祝いのシーンに着用します。
また、振袖を着るのは未婚女性だけで、未婚女性であれば着用する人の年齢は問いません。
少し前までは20代前半の女性が着用する着物といったイメージがあったかもしれません。
しかし近年では、女性の社会進出も盛んで、20代後半や30代になっても振袖を楽しんでいる方もいます。
なお、既婚女性の場合、第一礼装は留袖に変わります。
振袖の特徴②:その名の通り袖が長い
振袖は見た目にも特徴があります。
袖を振るといった名称の通り、少し動いただけで揺れ動く(振れる)ほど、長い袖が特徴です。
袖丈は通常の着物よりも長く、具体的には下記のような違いがあります。
・通常の着物の袖丈:49cm~53cm程度
・振袖の着物の袖丈:75cm~113cm程度
このように、通常の着物と振袖では、袖丈に30cm以上の差があります。
また、振袖の袖丈は長いほど格式が高いと言われており、最も長い振袖は「長振袖」と呼ばれています。
振袖の種類については、次の項目でさらに詳しくお話しましょう。
振袖の特徴③:袖の長さによって名称や格式が異なる
振袖と着物の違いとして、同じ種類であっても、さらに細かなカテゴリーに分かれる点もあげられます。
振袖は袖の長さによって3種類に分けられ、それぞれ格式が異なります。
大振袖
・袖の長さ:113cm程度
・着用する人:花嫁
・最も格式が高い振袖
・裾を引きずるように着付けをするため、「お引きずり」や「引き振袖」とも呼ばれる
・最近では背の高い女性が、成人式用の振袖として着用するケースも増えている
中振袖
・袖の長さ:100cm前後
・着用する人:成人式などお祝いの席がメイン
・成人式で着用されることの多い最もポピュラーな振袖
小振袖
・袖の長さ:60cm~85cm前後
・着用する人:卒業生など袴に合わせて使用
・比較的短い袖のため、動きやすさが特徴
・振袖の中では最もカジュアル
・袴やブーツと合わせたときにバランスが良い
振袖の特徴④:お祝いごとの席で幅広く着用できる
振袖は成人式のイメージが強いものの、その他にもお祝いごとの席で幅広く着用できる着物です。
未婚女性は、振袖さえあれば、さまざまな場面で着回しができます。
例えば下記のような着用シーンが想定できるでしょう。
・格式の高いお祝いごと
・改まった雰囲気のパーティー
・お正月の初詣
とくに海外の人が参加するようなパーティーや催しでは、振袖を着用することでその場をより華やかに盛り上げるため、主催者からも喜ばれるかもしれません。
振袖の特徴⑤:結婚した後は訪問着として仕立て直せる
振袖は未婚女性の第一礼装のため、結婚すると着用シーンがなくなります。
しかし、仕立て直しをすることで、訪問着として活用できます。
とくにピンク色や淡い水色といった落ち着いた色の振袖であれば、長く愛用できそうです。
振袖から訪問着に仕立て直すときには、専門の職人としっかりと打ち合わせしてください。
袖を切ってしまうと元には戻せないので、全体のバランスをチェックして、後悔のないように仕立て直してもらうことが大切です。
振袖を成人式に着る理由
着物にはさまざまな種類がありますが、なぜ振袖を着るのか疑問に思った方もいるかもしれません。
振袖は江戸時代の踊り子たちが所作を美しく見せるために、わざと袖を長くしたとも言われています。
所作が美しく見える一方で、日常生活に送るのは不便ですから、特別なときに着る礼装として誕生したと言われているようです。
また、振袖の袖を振るという行為には、お清めや厄払いといった意味もあります。
成人式で振袖を着用する行為には災いを避け、利益が舞い込んで来ますように……という願いも込められているでしょう。
また、振袖を未婚女性が着用するといわれるのは、この袖を振る行為が理由です。
着物を日常的に着ていた時代では、袖を振るという行為は、恋愛的な表現になると言われていました。
そのため、袖を振ることが愛想を振り撒く意味合いになるため、既婚女性が着ると良くないといった考えがあり、未婚女性のみが着用する特別な着物になったようです。
着物には振袖の他にどんな種類がある?
振袖以外の着物にはどのような種類があり、さらにいつ着用するのでしょうか。
ここでは振袖との違いも含めて、代表的な着物の種類をご紹介します。
着物の種類①:訪問着
未婚女性のみが着用できる振袖とは違い、既婚・未婚問わずに着られるのが訪問着です。
フォーマルなシーンからカジュアルなお出かけシーンまで、幅広く着用できるでしょう。
結婚式や七五三をはじめとする子どものお祝い行事にも着用可能です。
格式としては、留袖に次ぐ準礼服又は略礼装にあたります。
着物の種類②:留袖
既婚女性の第一礼装が留袖です。
振袖の袖を切り、仕立て直して留袖にされる方もいます。
基本的に留袖は、式典や結婚式に参列する場合に着用します。
留袖はさらに色でも格式が分かれます。
黒留袖と呼ばれる黒地の留袖は非常に格式が高く、着用するのは結婚式や披露宴のみです。
さらに着用できるのは新郎新婦の母親、仲人の妻、新郎新婦の姉妹などごく近い近親者だけに限られています。
もう一方の色留袖は、黒以外の地色で仕立てられた留袖です。
こちらの色留袖に関しては、未婚でも着用可能です。
黒留袖よりも厳格ではなく、家族や近親者のお祝いごとや結婚式に着用できるでしょう。
カラフルな色の着物であるため、柄や帯とのコーディネートが楽しめます。
着物の種類③:付け下げと小紋
付け下げと小紋は、振袖とは異なり、日常のカジュアルなシーンで身につける着物です。
付け下げは一見すると訪問着に似ていますが、よく見ると柄の入り方に違いがあります。
付け下げは縫い目が模様にかからないようにデザインされており、仕立ての時間が短縮されている違いがあるでしょう。
そのため、付け下げは訪問着よりもやや格下になります。
そして、小紋は柄に大小はあるものの、同じ柄が繰り返し詰め込まれているのが特徴です。
格式としては、小紋は付け下げとほぼ同格です。
着物の種類④:浴衣
浴衣は、浴衣地という種類の木綿を用いて作られた単衣の長着です。
古く日本では、家庭内でくつろぐために使用されてきました。
今日では縁日や夏祭り、夕涼みといった場面で着用されています。
また、浴衣は振袖や他の着物とは違い、肌襦袢を用いず素肌に着るのも特徴です。
足元も草履を履かず、素足に下駄といったラフな雰囲気になるでしょう。
外歩きには不向きというわけではないものの、あくまで近所までの外出やお祭りに参加する際に着用する、非常にカジュアルな着物です。
着る期間が限られた振袖を存分に楽しんで
振袖は着物の一種で、他の着物と比べると袖丈が長いという特徴があります。
また、振袖は未婚女性にとっての第一礼装であるため、人によっては着る機会の少ない着物だといえるでしょう。
もしかしたら着用の機会は、成人式や結婚式などで一度きり、ということもあるかもしれません。
振袖を着る機会がめぐってきたのならば、ぜひ華やかな姿を存分に楽しんでください。