振袖を一層華やかに見せてくれるものに、「重ね襟」があります。
華やかな振袖をよく見ると、本来はそこまで重ね着をしていないはずなのに、襟が何重にも重なっていることに気付くのではないでしょうか。
重ね襟は振袖全体で見ると細かい箇所ですが、顔に近いこともあって、印象をガラリと変えてくれるアイテムです。
今回は振袖の重ね襟とは何か、そして選び方や付け方についてお話しますので、ぜひ参考にしてください。
振袖の重ね襟とは?半襟との違い
振袖の襟に付けられる装飾には、重ね襟ともう一つ、半襟があります。
どちらも大まかなくくりでは「和装小物」にあたり、必ずしも付けなければならないわけではありません。
しかし、成人式のような場所では、いずれかを付けた方が華やかに襟元を飾れます。
ここでは、それぞれの襟について説明します。
成人式を含む式典に使用できる「重ね襟」
幅:10cm~12cmほど
式典用の礼装にふさわしいとされているのが「重ね襟」です。
昔の礼装は、十二単のように着物を重ねることがマナーであり、美しく見えると考えられていました。
また着物を重ねることには、「喜びが幾重も重なるように」という願いも込められたといいます。
その文化の名残として、襟部分だけを切り取ったような装飾である重ね襟を、振袖の襟元に付けるようになりました。
振袖の襟の内側に縫い付け、または専用のクリップで留めて使用します。
襟元から少しだけ出し、まるで重ね着をしているように見せるのがポイントです。
重ね襟の方がカラーバリエーション豊かであり、二重または三重に重ねているように見える華やかさから、成人式のような式典で選ばれています。
近年ではパールやラインストーン、フリルをあしらった重ね襟も登場しています。
重ね襟は正装のときに使用することから、小紋や紬など普段着用する着物と合わせるには不向きです。
重ね襟は本物の襟ではなく、あくまでも重ね着風に見せる和風小物であるため、「伊達襟」とも呼ばれます。
カジュアルな場面でも使える「半襟」
幅:15cm~20cmほど
半襟は、長襦袢に付けて使用する襟です。
重ね襟は着物の装飾品としての役割を担っていましたが、半襟はどちらかというと、実用的な役割を持っています。
長襦袢や振袖が、皮脂や汗、ファンデーションなどで汚れないように保護する目的で使用します。
襟元から見えるため、装飾品としての役割はゼロではないものの、実用性を重視したい方に選ばれる和風小物といえるでしょう。
礼装用の重ね襟と違い、主にカジュアルなシーンで選ばれます。
また、半襟は実用品であることから、どの着物にも付けられることも特徴の一つです。
振袖はもちろん、小紋や紬といった普段着として着用する着物でも、半襟を使用できます。
振袖のカラー別・重ね襟の選び方
近年の重ね襟は色柄のバリエーションが豊かで、どれを選んで良いのか迷ってしまうほどです。
悩んだときにヒントになるのが振袖の色柄です。
一昔前まで振袖を含む礼装では、白の重ね襟が良いとされてきましたが、近年では好みの色柄を楽しんで構わないといった風潮に変化しています。
そのため、基本的には自分の肌が美しく見えるように、自分のパーソナルカラーに合わせて選ぶと良いでしょう。
しかし、振袖のカラーが決まっていると、それ以外にも考慮すべきことが増えてきます。
ここでは振袖のカラー別に、重ね襟の選び方ついて詳しく見てみましょう。
重ね襟の選び方①:振袖と同系色を選ぶ
振袖のカラーと同系色の重ね襟を選ぶと、落ち着いた印象になります。
例えば振袖のベースカラーがピンクであれば、同じようなピンク系統の明るい色合いの重ね襟を選ぶと、華やかな印象になるでしょう。
ただし、振袖が黒色や紺色といった寒色系カラーの場合、同系色を選ぶと顔周りが暗い印象になってしまうかもしれません。
寒色系の振袖を着用するのであれば、重ね襟は明るめの色合いを選ぶようにしてください。
例えば濃い紺色なら、水色や白がおすすめです。
重ね襟の選び方②:振袖と反対色を選ぶ
振袖とあえて反対のカラーを選ぶとアクセントになり、おしゃれな雰囲気を演出できます。
反対色とはその色の逆の色であり、例えば赤ならば緑、青ならば黄色です。
振袖のコーディネート全体を引き締めることができ、濃い色合いを選べば小顔効果を狙うこともできるでしょう。
重ね襟の選び方③:帯締めや帯揚げと色を合わせる
重ね襟は、振袖ではなく、帯締めや帯揚げとカラーを合わせることもできます。
振袖を基準にカラー選びをすると、デザインによってはごちゃごちゃとした印象を与えてしまうこともあるでしょう。
そういったときには、帯締めや帯揚げの色を合わせてみるとすっきりとした仕上がりになります。
色だけでなく、例えばレトロ調にするといったテイストを合わせてみるのも、遊び心のある着こなしになるのでおすすめです。
重ね襟の選び方④:迷ったときには金銀を取り入れる
どのようなテイストの振袖にも使える重ね襟を探しているのであれば、金色または銀色がおすすめです。
洋服では派手な印象の強い金色・銀色ですが、振袖で取り入れると高級感がアップします。
また、どのようなデザインの振袖であってもマッチするため、一つ持っていると便利です。
デザインにもよりますが、暖色系の振袖ならば金色、寒色系ならば銀色がおすすめです。
特に結婚式のような式典では、金色や銀色を取り入れることを意識しましょう。
主役の花嫁よりも派手になり過ぎず、上品さや高級感を取り入れることが可能です。
金銀はお祝いを象徴するカラーでもあるため、結婚式のような場にもマッチします。
重ね襟は振袖にどう付ける?
重ね襟は、前述したように二つの方法で付けることができます。
一つは、振袖の襟の内側に縫い付ける方法で、基本的にはお店にお願いすることになるでしょう。
もう一つは、襟ピンと呼ばれる専用のピンや、ゼムクリップを用いる方法です。
ピンやクリップを用いれば、簡単に取り付けることができるので、ぜひご自分でやってみましょう。
まずは重ね襟を半分に折って、その中心と振袖の背中心を合わせます。
そして、重ね襟が5mmほど出るように、振袖との位置を調整してください。
その後、背中心から5~10cm離れた場所をピンやクリップで留めれば完了です。
ただ、クリップやピンで留めるだけだと、着崩れを起こすことがあります。
振袖を着慣れていない方は、縫い付ける方法から試してみてください。
重ね襟一つで振袖の雰囲気は大きく変わる
重ね襟は、振袖から少し見えるだけですが、顔周りをより華やかにしてくれる重要な和風小物です。
付けるのは必須ではないものの、重ね襟一つで振袖の雰囲気は大きく変わります。
成人式のような一度きりの場に出席するのであれば、ぜひ重ね襟も併せて選んでください。
お店で一緒に試着をして、振袖だけでなく自分の表情まで明るくしてくれるような、素敵な重ね襟を選びましょう。